発熱外来
発熱外来
コロナ(COVID-19)感染症が猛威をふるうようになって、「発熱外来」という言葉をよく耳にするようになりました。ガウン・ゴーグル・マスク・手袋などを装着した医療従事者が診療に走り回っている姿がテレビでもよく放映されています。発熱外来とは、特定の病気を対象とするものではなく、発熱や咳・鼻水・のどの痛み、下痢などの症状があって感染症の疑いがある患者さんを通常の診察室ではなく個別に設置したスペースで診察を行うことを言います。
発熱とは体温が37.5℃以上を呈した状態をいい、高熱とは体温が38.0℃以上を呈した状態、と日本の感染症法で定められています。細菌やウイルスなどの「抗原」を体内で感知すると、白血球が「サイトカイン」という物質を大量に産生し、サイトカインはさらに「プロスタグランジン」という物質を体内で作らせます。プロスタグランジンは脳内の体温調節中枢を刺激して、身体の設定温度を上げます。これが一般的な発熱の仕組みです。発熱すると、身体は寒い環境の中にいるような反応を起こします。これが寒気であったり震えであったりという症状になります。
発熱やそれに伴う症状は不快なものですが、細菌やウイルスの増殖を抑えたり、白血球が活性化して免疫力を上げたりするメリットがあるため、身体に備わった防御システムであるとも言えます。
発熱の原因として最も多いのは、細菌やウイルスによる感染症です。例えば、コロナウイルスやインフルエンザウイルスのように飛沫感染するようなものは、飛沫を吸い込むところ、すなわち鼻やのど、肺などに炎症が起きやすいため、鼻水や咳、のどの痛み、肺炎などの症状を起こしやすくなります。ノロウイルスは口から腸に入ってきますので、吐き気や下痢などの胃腸の症状が中心になります。細菌が膀胱から遡ってきて腎臓に到達すると腎盂腎炎となって背中や腰が痛くなったりします。水痘ウイルスのように皮膚を好むウイルスは、水疱瘡や帯状疱疹として皮膚に異常が見られます。
がん細胞自身が熱を発生させる物質を産生することがあり、「腫瘍熱」と呼ばれる発熱が起こることがあります。感染症による発熱は感染症が鎮まれば自然と治まっていきますが、腫瘍熱は原因が除去できなければ継続し続けることが多いです。このため、熱の経過(何日出ているか、いつから出ているか)が見分ける上で重要になります。
熱中症に代表されるように、体外に熱を放出できなくなって体内にこもると体温が上昇します。体の正常な反応として発熱しているわけではないので、しばしば体のバランスを壊して、危険な状態を招くことがあります。
コロナやインフルエンザなどで典型的にみられる症状は、主に咳、鼻水、のどの痛み、頭痛などですが、それ以外の症状がある場合には注意が必要です。総合内科専門医が診察しておりますので、お気軽にご相談ください。